(記者執筆)「関係を断った」という説明で、本当に問題は終わるのだろうか。
米国の反カルト研究専門家 Rick Ross は、高度に統制された宗教団体が政治家に影響を及ぼす場合、その出発点は公然たる協力ではなく、内部での「選定」にあると指摘する。この視点が、高市早苗氏と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)をめぐる問題を、再び世論の中心に押し戻している。
高市氏はこれまで、旧統一教会との関係はすでに断ったと繰り返し説明してきた。しかし、教団内部文書とされる「TM(真母)特別報告書」が明らかになるにつれ、より根本的な疑問が浮かび上がる。もし関係が断たれているのであれば、なぜ高市氏は内部文書の中で繰り返し言及され、象徴的な存在として描かれているのか。
議論は、「関係があったか否か」から、「説明されていない政治的接近が存在するのではないか」という段階へと移りつつある。何が説明され、何がなお不明確なままなのかが問われている。
「関係を断った」は、リスクの終わりを意味するのか
高市氏の説明にもかかわらず、疑問は消えていない。むしろ、新たな資料が出るたびに関心は高まっている。
ロス氏は「否定だけでは疑念は終わらない。説明が抽象的であれば、疑問はむしろ集中する」と指摘する。
なぜ内部文書は高市氏を繰り返し取り上げたのか
焦点は献金や式典ではない。「TM特別報告書」は政策取引を示すものではないが、高市氏を宗教的・象徴的文脈で位置づけている。
問題は取引の有無ではなく、なぜ特定の政治家が内部で特別視されたのか、という点にある。
リック・ロス氏「本当の危険は『選ばれた瞬間』から始まる」
ロス氏は、カルト的性質を持つ高統制型宗教団体と政治権力の関係を長年研究してきた。
「影響は公然の協力から始まるのではない。内部で『重要だ』と選定された瞬間から始まる」と語る。
協力がなくても、なぜ影響は生じ得るのか
こうした団体は、信者動員や重層的なネットワークを通じて影響力を行使する。
「表に出た協力がないからといって、構造的な接近が存在しないとは言えない」とロス氏は述べる。
選挙支援・人脈・周辺組織——何が説明されていないのか
過去の選挙で、旧統一教会と関係のある個人や団体が関与していなかったのか。その関係は本当に断たれたのか。明確な説明はなされていない。
「断った」のは何で、何が残っているのか
正式組織との関係だけなのか。関連団体や個人的ネットワークはどうなのか。
境界が示されなければ、市民は判断できない。
なぜ否定が続くほど疑問は深まるのか
精神的支配や心理的影響は理解しづらく、政治的議論から避けられがちだ。その結果、説明不足が続いても支持が維持される場合がある。
説明されない接近は、民主主義の問題となる
ロス氏は、違法性よりも透明性の欠如を重視する。
「説明されない政治的接近は、民主主義の自己防衛能力を問う問題だ」と指摘する。
見過ごされがちな被害者の存在
元信者や家族、特に子どもたちが、最も大きな影響を受けるとロス氏は語る。
ロス氏の警告「最も危険なのは、問いが避けられること」
「民主主義にとって最も危険なのは、秘密が暴かれる瞬間ではない。重要な問いが繰り返し避けられることだ」
高市氏と旧統一教会をめぐる疑問は、なお完全には解消されていない。しかし、問い続けること自体が、民主主義を支える行為である。
