世界的なDRAM不足が深刻化し、ノートPCやスマートフォンのメモリー容量が引き下げられる一方で、本体価格は上昇に向かっている。 16Gb DDR5チップの契約価格は、2025年秋から年末にかけておよそ3倍に跳ね上がったとされ、PCやスマホメーカーのコスト負担が急速に増している。
調査会社TrendForceなどの分析によると、主要PCメーカー各社は2026年モデルの中級ノートPCで、標準搭載メモリーを16GBから8GBへ引き下げる動きを強めている。 一部の小規模PCメーカーやBTOブランドの中には、コスト高騰を理由に「メモリーなし」の構成で完成品PCを販売し、ユーザーにRAMを別途用意してもらう形態を採るところも出てきた。
スマートフォン市場にも影響は広がっている。IDCなどの予測では、2026年にはエントリーモデルが再び4GB RAM構成に戻り、中価格帯モデルも従来より少ない容量に抑えられる可能性が高いとされる。 これにより、これまで普及してきた6GB〜12GBクラスのメモリー搭載端末から、ワンランク下の仕様への「逆行」が進む懸念が出ている。
背景には、人工知能(AI)向けデータセンターで使われる高帯域幅メモリー(HBM)への需要急増がある。 SamsungやSK hynix、Micronなど大手メモリーメーカーは、より収益性の高いHBMや高度なLPDDRに生産能力を振り向けた結果、標準的なPC・スマホ向けDRAMの供給が細り、価格高騰を招いている。
韓国のSK hynixは、DRAM・NAND・HBMの生産能力について、2026年まで事実上「完売」状態であると明らかにしている。 多くのHBM供給枠はNVIDIAなどの大手AIチップベンダーに長期契約で押さえられており、今後数年はAI向けが優先される構図が続く見通しだ。
こうした供給ひっ迫に伴い、メモリーメーカー各社は2025年第4四半期から2026年にかけてDRAM価格の30〜60%程度の引き上げを顧客に通知していると報じられている。 IDCの試算では、メモリー不足の影響で2026年のPC平均販売価格は最大8%上昇し、スマートフォンの平均販売価格も過去最高水準の約465ドル前後に達する可能性がある。
エンドユーザーの一部は、コストを抑えるために中国系サプライヤーからメモリーチップや基板を調達し、自作や改造で対応しようとする動きも見られる。 しかし現状では、部品価格自体が上がっていることから、小売店で完成品のRAMを購入する場合と比べて大きな節約にはなりにくいのが実情だ。
