長年にわたりAppleがアプリストアで維持してきた強力な支配体制、通称「Apple税」が、ついに終わりを迎えようとしています。これまでAppleは、アプリ開発者に対し自社の決済システムのみを利用させ、アプリ内購入ごとに15~30%の手数料を徴収してきました。しかし、米連邦控訴裁判所が抜本的な改革を命じる判決を下し、Appleの独占的な手数料モデルが転換点を迎えています。
米国第9巡回区控訴裁判所は、Appleが求めていた新ルールの適用延期を却下しました。この決定は、2020年から続く「フォートナイト」開発元Epic Gamesとの法廷闘争が発端です。Epicは、Appleがアプリ内決済を自社システムに限定し、他の決済方法への誘導を禁じていることに異議を唱えてきました。
先にロジャース判事は、Appleが2021年の差止命令を回避しようとしたことを「悪意ある遵守」と認定。Appleが外部決済にも27%の手数料を課し、ユーザー誘導を妨げる警告画面を表示したことが問題視されました。今回の判決でAppleは、外部決済への手数料徴収を禁止され、開発者が自由に自社決済へのリンクをアプリ内に設置できるようになります。
開発者とユーザーへの即時的な影響
- 開発者はAppleの手数料を回避可能に
SpotifyやAmazon Kindleなどは、すでに自社サイトで直接決済できるリンクをアプリに追加し、価格表示も透明化しています。 - ユーザーは選択肢と価格面で恩恵
開発者がAppleへの手数料を支払う必要がなくなることで、より安価な価格設定や多様な決済方法が期待できます。 - 「警告画面」も禁止
Appleは、ユーザーが外部決済を選ぶことを妨げる警告表示などを行うことも禁じられました。
Spotifyは「新時代の幕開け」と歓迎し、ついにサブスクリプション価格を明示し、ウェブ決済に誘導できるようになったと発表しています。
なぜ裁判所はAppleに不利な判断を下したのか?
判事は、Appleが収益を守るために過去の裁判所命令に明確に違反したと指摘。外部取引にも27%の手数料を課し、アプリ内リンクを制限するなど、競争を妨げ「不当な利益」を維持しようとしたと判断しました。今回の判決は、開発者と消費者により多くの自由と選択肢を与えることを目的としています。
Appleは控訴を続ける方針ですが、判決が確定するまで新ルールに従う必要があります。欧州でもデジタル市場法(DMA)違反による5億ユーロの制裁金を争っており、米国でも新たな集団訴訟が進行中です。今後、開発者がApple手数料を回避するアプリのアップデートが相次ぐと予想されています。
この判決は、モバイルアプリ経済における大きな転換点です。長年続いた「Apple税」は事実上終焉を迎え、iOS上で競争・透明性・消費者の選択肢が大きく広がる新時代の幕開けとなります。