スマホのリファービッシュ品について考えてみた!


みなさんは「リファービッシュ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実はモバイル業界では比較的メジャーな用語ですが、一般にはあまり知られていないようにも感じます。

リファービッシュとは「整備済製品」や「中古整備品」などと訳されることもあります。主に中古買取やキャリアショップなどで下取りされた製品を再びメンテナンスし、状態の良い中古品として再生させた製品を指します。

スマートフォン(スマホ)やノートPCなどでよく行われる製品の再販方法で、環境問題への取り組みの一環として近年注目を集めています。

リファービッシュされた製品にはどのようなメリットがあるのでしょうか。またリスクはないのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホのリファービッシュ品について解説します。


スマホを再生させるメリットってなんだ?

■スマホメーカーや販売店が取り組むリファービッシュ品販売
スマホのリファービッシュ品(リファービッシュスマホ)と言うと、多少業界に明るい人であればAppleの取り組みなどを連想する人も多いかもしれません。

Appleは比較的早い時期からPCでやスマホのリファービッシュ品を販売してきました。「認定整備済製品」として公式サイトなどで販売されています。

Appleの場合、単なるクリーニングやメンテナンスだけではなく、パーツやアクセサリーの交換なども行った上で動作確認を行い、一定の保証を再付与した上で販売しています。


Appleは販売している製品の多くをリファービッシュ品として再販売している

Appleのようなメーカー以外にも、販売店が独自にリファービッシュ品として販売することもあります。

例えば「カメラのキタムラ」では自社でスマホなどを整備・点検し、独自の基準を設けて「キタムラリファービッシュ」として販売を行っています。

こういった整備・点検のシステムを持つ販売店は非常に珍しいですが、長年カメラの修理や整備を行ってきた同社のノウハウが活かされているのかもしれません。


カメラのキタムラはiPhoneシリーズに限定してリファービッシュを行っている

■リファービッシュスマホのメリットとデメリット
では、リファービッシュ品のスマホと中古品として販売されるスマホでは何が違うのでしょうか。大きなメリットは3つあります。

1つは前述の通り「整備やクリーニングが入念に行われている」ことです。一般的な中古スマホの場合、当然ながら買い取り(仕入れ)の段階で動作状態や各所の傷の有無などは点検されますが、基本的に部品交換などは行われずそのままの状態で販売されます。

例えばディスプレイ面に小さな傷があったとしても、「傷あり」と明記した上でそのまま販売するのが中古スマホです。また、バッテリーが多少劣化していてもそのままの状態で価格を下げて売られます。


中古販売店で販売されるスマホは点検はされているが整備は行われていない

一方リファービッシュ品は、動作チェックだけではなく筐体の傷や内部部品の状態も点検された上で、新品よりも明らかに状態が劣化している部品などは交換した上で販売されます。

そのため、Appleのようなメーカーによるリファービッシュ品であればほぼ新品と同じ状態だと考えて問題ありません。

カメラのキタムラのような販売店によるリファービッシュでも、劣化したバッテリー類の交換はもちろん、傷のある外装やディスプレイなどは交換された上で販売されます。

中古スマホを購入する際に人々が気にする部分には、本体の傷やバッテリーの劣化状態、さらに動作の安定性等があるかと思います。

こういった部分を徹底的に整備し、クリーニングを行い、部品交換と動作チェックを行った上で販売するため、リファービッシュ品は非常に安心して購入できる「極めて状態の良い中古品」と考えることができます。


カメラのキタムラではリファービッシュ品の状態をAA〜Bまでの段階表記によってグレード分けしている

次のメリットは「価格」です。

前述のようにリファービッシュ品は「極めて状態の良い中古品」であることから、性能や品質面ではほぼ新品と変わらないのに価格は安いという点が最大の魅力です。

とくに昨今のスマホは価格が上昇しており、ハイエンド機種ともなると15万円や20万円といった価格も当たり前で、グレードや機種によっては総額で25万円を超えてしまうことすらあります。

安価なエントリーモデルやミッドレンジモデルでは新品との価格差が相対的に小さくなってしまいますが、ハイエンド機種を少しでも安く購入したいという人にこそ、リファービッシュ品は大きな魅力があります。

また、新品での購入が難しい「1世代前の機種」が欲しい場合なども、リファービッシュ品は非常に魅力的です。

いわゆる「型落ちモデル」の場合、敢えて新品として購入するには価格的な魅力が薄く、しかし一般的な中古製品では状態に不安があるといった場合、リファービッシュ品であれば新品同様の端末を安価に購入することが可能です。


現在のスマホは1〜2世代前の機種でも性能面で大きく劣るといったことがないため、少し古いハイエンド機種のリファービッシュ品を購入するのは全然「アリ」の選択だ

そして最後のメリットとして挙げられるのは「環境に優しい」点です。

スマホは私たちが日々使う道具であり必須であるために必ず数年おきに買い替える必要がありますが、買い替えサイクルの早い製品だけに環境負荷も非常に高い製品です。

そのためメーカーはリサイクル素材やできる限り環境負荷の低い素材を部品に採用することで環境対策をアピールしていますが、ユーザーができる何よりも大きな環境対策は「製品をできるだけ長く利用する」ことです。

そういった観点からも中古スマホ市場は注目されているわけですが、その中でもリファービッシュ品はユーザー満足度と製品としての寿命の両方にメリットがあります。

最新のスマホへ毎年買い替えるのも大いに結構ですが、環境負荷を考えて敢えてリファービッシュ品を使うという選択肢もまた「アリ」だと考えます。


スマホを修理して長く使う。そういうサステナブルな選択肢があってもいい

それでは、リファービッシュ品にはデメリットはないのでしょうか。大きなデメリットとして2つの点が挙げられると考えます。

1つは「絶対数が少ない」という点です。メーカーによるリファービッシュ品でも販売店によるリファービッシュ品でも、基本的に「中古として回収・買い取りを行った端末の中から状態の良い機種を選別してさらに整備を行う」という段階を踏む上、整備や点検にかかる人的・時間的コストも大きくなるため、用意できる数がどうしても少なくなります。

そのため、「iPhone 12 Proでストレージ容量が512GBのゴールドカラーが欲しい」といったような細かな機種指定の要望があったとしても、それに合致する機種が売っていない場合も多々あります。


Apple公式でさえ、欲しい色やストレージ容量のリファービッシュ品が販売されているとは限らない

もう1つのデメリットは「飽くまでも中古品である」という点です。

どれだけ丁寧に整備し部品交換を行ってクリーニングを行ったとしても誰かが使用した端末(あるいは主要部品)であることには変わりなく、その点に不満や不快感を持つ人にはあまりオススメできません。

自動車や古着などで「人が使ったモノは使いたくない」と考える人が一定数いるのと同じことです。

一方で、リサイクルショップや中古車販売、さらにはフリーマーケットアプリなどが大人気であるように、中古であるという点を気にしない人もたくさんいます。

「中古でも気にしない」、「これだけキレイで保証までついているなら問題ない」。そのように考えられるのであれば、リファービッシュ品のスマホは非常に高い魅力を持つ商品となります。


どんな新品のスマホでも、使った瞬間に中古になるのだから新品と中古に大きな差などないとも言える

■リファービッシュスマホという「これからの時代の選択肢」
MMD研究所が2023年5月に行った「企業の環境・社会問題への取り組み及び端末の再生品・中古品に対する意識調査」によると、リファービッシュという言葉やその意味を知っていると答えた人の割合は19.6%で、59.2%の人々はリファービッシュという言葉すら知りませんでした。

一方で、「再生品や中古品が今後スマートフォンを購入する際に選択肢に入るか」という項目では再生品(リファービッシュ品)も選択肢に入ると答えた人は33%も存在し、さらに「スマートフォン購入時に優先的に購入したいと思える取り組み」という調査項目では、「故障しても部品の買い替え、修理で使用し続けられる」ことを評価する声は、「そう思う」、「ややそう思う」と答えた人々が合わせて63.4%もいました。

つまり多くの人々は、リファービッシュという言葉やリファービッシュ品というものがあることをただ単に知らないだけか、あるいはリファービッシュ品がどのようなものであるのかを正しく理解していないだけなのです。


ただの中古よりも選択肢として注目を集めている点は、人々の関心の高さの表れだと考えられる

「スマホはできる限り安く手に入れたいが性能で不満が出る格安スマホは買いたくない」
「中古スマホは部品の劣化や故障が不安」
「高い新品のスマホを買ってもどうせすぐにボロボロにしてしまう」
「最新モデルを買ったところで普段使いじゃほとんど性能的なメリットがないから型落ちで十分」
「環境のためにも使えるスマホは修理しながらできるだけ長く使いたい」

そのように考えたことは誰でも一度はあるはずです。そんな時こそリファービッシュ品のスマホを思い出して探してみてください。

案外、思っていた以上に良いスマホを購入できるかもしれません。


自分が満足できるスマホなら、新品でも中古でもリファービッシュでも何でも良いのだ

記事執筆:秋吉 健

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