日本と海外でのスマホアプリの使い方の違いを考えてみた!


みなさんは普段、スマートフォン(スマホ)でどのようなアプリや機能を主に使うでしょうか。日常生活ではLINEで会話をし、Twitterでニュースや面白いネタ投稿を読み、手軽な無料ゲームを遊び、美味しいスイーツや料理を食べる前には写真を撮ってインスタにUPしたりします。

こういった利用方法は日本に住んでいると当たり前のように感じますが、世界を見渡してみると意外と「え!?それ当たり前なの!?」と驚くような使い方や「海外での当たり前」が存在していたりします。

海外ではスマホを何に使っているのでしょうか。またどうしてそのような文化や慣習が定着したのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホのアプリや機能の使い方を、海外と日本で比較しながら文化・慣習の違いを見てみたいと思います。


スマホの使い方、日本と世界でどう違う?

■リアルタイムを好む世界と好まない日本
今回主に参考としたのは、MMD研究所が2022年8月に調査を行い、11月に公開した「日米中3ヶ国都市部スマートフォンユーザー比較調査第3弾〜アプリ編〜」です。

調査は日本とアメリカ(USA)、そして中国の3カ国で行われ、アプリの利用頻度やゲームアプリで遊ばれているゲームジャンルなどが調査対象となりました。

最初に目を引いたのは「週に1回以上利用しているアプリのジャンル」の大きな違いです。

日本ではメッセージアプリやメール、SNSといったものが並び、さらに天気やニュースなどが続きます。メッセージアプリとはほぼイコールでLINEだと考えても問題はないでしょう。

全体として「非同期型」や「非リアルタイム型」と呼ばれるアプリや機能の利用頻度が高い傾向にあり、電話のような「相手の時間に割り込むアプリ」などはあまり利用されていないのが分かります。

一方アメリカでは、メッセージアプリやメール、SNSの利用頻度が高めである点は変わらないものの、電話の利用頻度の高さが特筆に値します。言葉によるリアルタイムコミュニケーションを重んじる国民性が現れているように感じます。

中国はどうでしょうか。メッセージアプリやメール、SNSの利用頻度が高く電話の利用頻度も高い点はアメリカと似ていますが、ここでもまたお国柄が非常によく現れる部分があります。それは「買い物」関連アプリです。

銀行やネットショッピング、ネットスーパーといったアプリの利用頻度が非常に高く、当然それに伴って電子決済アプリの利用頻度も非常に高くなっています。

「中国人には拝金主義が多い」などと揶揄されることもありますが、スマホアプリでも金銭への執着心や積極的にスマホを経済活動に利用しようという傾向が強いことが見て取れます。


国によってここまで傾向がハッキリと分かれるとなかなか興味深い

アメリカ人の電話好き、中国人のお金好きと一言でまとめてしまうのは簡単ですが、その背景を色々と考察してみるのも面白いものです。

例えば電話アプリに関してはアメリカも中国も非常に利用率が高く、日本だけが異質に見えますが、これは日本語とSNS文化(メッセージングアプリ文化)の相性の良さ、そして日本人独特なコミュニケーション文化があるように思われます。

よく、日本だけTwitterのシェアが異常に高いことや日本でTwitterが定着した理由の1つとして、140文字で伝えられる情報量が非常に多い点が挙げられます。

日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、英数字など、表意文字と表音文字を巧みに組み合わせて言葉のニュアンスまで表現する非常に特殊な言語文化(文字文化)を持ちます。

中国語も漢字(簡体字)なので少ない文字数で情報を伝えるSNSアプリとの相性は良いですが、中国人はダイレクトに言葉で相手に意志を伝えることを好む傾向があります。

例えば日本の電車内や道端でも、場所を気にせずよく喋っているのはほとんどが欧米人や中国人です。人と直接言葉を交わす、という行為を重んじ楽しむという文化が希薄な日本が特殊であるということかもしれません。


会話によるコミュニケーションを重視しないのは日本人くらい?

モバイルライターとして筆者が面白いと感じるのは、かつて通話を中心とした携帯電話をひたすらに進化させ続けて「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」と呼ばれるまでに機能拡張してきた日本人が電話をあまりしなくなり、文字によるメッセージングを重視した「ページャー」を発展させてキーボード付きスマートフォンまで進化させ、その後iPhoneの登場まで促した欧米人が電話を好んで利用しているという点です。

日本人は携帯電話の時代、着メロや着うた、果ては着信イルミネーションや光るアンテナなど、ひたすら電話機能を充実させることに注力してきたとも言えます。

そんな日本人がぱったりと電話から興味をなくし、「LINEやTwitterで十分」、「電話やLINE通話を使うのは急いでいる時だけ」という使い方になってきたのも、そもそも日本人がリアルタイムコミュニケーションをあまり好んでいなかったか、時間効率を重視しすぎるあまりに不要であると切り捨ててきた結果なのかもしれません。


電話やメール、チャットなど複数の連絡手段が用意されていた時、敢えて電話を選ぶ日本人は少ない気がする

■スマホゲームの人気ジャンルから透けて見えるモノ
次に目を引いたのは「1年間で遊んだモバイルゲームのジャンル」です。ここでも日本人とそれ以外の地域の人々との違いが明確に現れており、さらにアメリカや中国でも傾向が異なるなど国ごとの文化の違いを感じさせます。

例えば日本ではパズルゲームが最も遊ばれており、次いでロールプレイング、音楽・リズム、シミュレーション、育成ゲームと続きます。日本で人気のゲームタイトルなどを考えてみても、全体としてはかなりライトな遊び方(≒暇つぶし的)であることが示唆されます。

一方アメリカでは日本以上にパズルゲームの人気が高く、そこに次ぐのがアドベンチャー、シューティング(恐らくここではFPSやTPSを指すものと思われる)、スポーツ、レーシング、格闘、ホラーと、かなり本格的に腰を据えて遊ぶようなゲームジャンルが入ってきます。

中国ではロールプレイングとシューティングが2強といった様子で、そこにシミュレーションやアドベンチャー、スポーツ、レーシング、格闘ゲームなどが続きます。

海外で大人気のシューティングやスポーツ、レーシング、格闘といった「対戦型」のゲームが日本では軒並み人気がない点に、他人との競争や闘争を好まない日本人の気質や風土的なものを感じます。


日本人はゲームでも平和主義?

また、「この1年間でモバイルゲームはプレイしていない」という日本人の数が圧倒的に多い点も驚きです。

というのも、日本人のスマホゲーム課金額は世界でも群を抜いて多く、SensorTowerが2021年10月に公開した調査データによると、日本人のスマホゲームへの課金額は1人あたり149ドルで、2位の韓国(95ドル)や3位のアメリカ(90ドル)を大きく上回っています。

MMD研究所のデータでは日本人の半数以上が「モバイルゲームを1年間まったく遊んでいない」と回答していることを考慮すると、非常に少数のモバイルゲームユーザーがかなりの重課金を行っている様子が透けて見えます。


さまざまなゲームジャンルをくまなく遊んでいるアメリカ人の約1.5倍も課金している

背景の1つには、日本におけるルートボックス(いわゆる課金ガチャ)規制の甘さがあるように思われます。

海外では子供が遊ぶゲームに対するルートボックスの導入に厳しい意見が多く、スマホゲームが大流行し始めた5〜6年前から大きな問題となっています。

今年に入っても欧州を中心にルートボックスへの規制を強めるべきだとの見解や意見書の提出が相次いでおり、ゲーム業界的にも具体的な規制や法制化が進む前に、自主規制として控えようという動きが強まっています。

日本ではこういった動きが数年前こそ若干あったものの、現在は大きく取り沙汰されることがほとんどありません。事実上の野放し状態であり、国民全体にも「課金ガチャは規制したほうが良い」という風潮になっていないことが、重課金を止められない流れにつながっているように思えます。


日本のスマホゲームにおけるルートボックス依存の問題は、いずれ別コラムにて詳しく取り上げたい(画像はガンホー「パズル&ドラゴンズ」)

■スマホアプリは人々の鏡
スマホアプリやスマホ機能の使い方が世界の国々や地域ごとに違うことは用意に想像ができ、ある程度は予想通りでした。

一方で、日本だけが特殊な環境であることやアプリからその国の社会や経済状況といった背景まで見えてくる点については、小さくない驚きと収穫があったように思います。

スマホOSやスマホメーカーのシェアでは、日本はAppleのiOSとiPhoneシリーズが非常に高く世界的に特異であることはよく話題となりますが、アプリについてはあまり知られていない部分もあったのではないでしょうか。

日本人が電話を好まず非リアルタイムコミュニケーションツールであるメッセージングアプリを好む傾向は、スマホゲームで対戦型ゲームを好まない傾向とも通じるものがあるように思います。人と積極的に関わろうとしない国民性は、世界的にもかなり珍しいかもしれません。

みなさんは普段どのようなアプリを好んで使っているでしょうか。また人との直接的なコミュニケーションやコンタクトを好む人はどの程度いるでしょうか。世界との対比の中で、ますます日本の風土や日本人という存在の面白さに興味を惹かれた次第です。


独特な文化、独特なスマホ習慣。日本人とスマホ&スマホアプリの関係は本当に興味が尽きない

記事執筆:秋吉 健

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