選択と集中を加速させるガーディナルヘルス!成長戦略とビジョン、日本市場に注力する理由が明らかに


中心静脈用カテーテル、経腸栄養用カテーテル、深部静脈血栓症予防用ポンプなどの医療機器の輸入・製造・販売を手がけるカーディナルヘルスは、静岡県袋井市のR&Dセンター・袋井工場で開発・製造した医療用の『カテーテル』の輸出を開始するなど、事業の成長を加速させている。

同社は11月よりカーディナルヘルスの韓国法人向けに新生児用末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテルの輸出を開始した。これまでカーディナルヘルスのR&Dセンター・袋井工場で開発・製造されたカテーテルの販売は、日本国内に限定されてきた。同社海外拠点からの強い要望により、日本のカーディナルヘルスとして初めてとなる、カテーテル輸出が実現した。同社は韓国での販売開始を皮切りに、アジア太平洋地域へと販路の拡大を目指している。

世界的な半導体不足、ロシアのウクライナ侵攻による世界情勢の不安、カーディナルヘルスの本社がある米国のインフレ等……世界が混沌とするこのいま、カーディナルヘルスはどう事業を進めていくのか。日本法人であるカーディナルヘルス株式会社 野田良 代表取締役社長と、米国外の医療機器事業を統括するベンジャミン・ブリンカー国際医療機器流通部門プレジデント(以下、ブリンカー氏)に聞いた。

■コスト増でも好調な理由
ブリンカー氏はまず、米国にあるカーディナルヘルス本社の2023年度の第一四半期の業績が好調である理由について、こう語った。

「新型コロナウイルス拡大で落ち込んでいた市場が回復しつつあり、その過程で競合他社を超えるシェアを獲得できた。いっぽうで半導体不足や樹脂不足などのコストインフレによる製造コスト増に加え、人件費・輸送費なども上り、医療機器事業は全体としてコスト増に。

こうしたコスト増に対し、営業費節約などのコスト削減を徹底し、コスト増を販売価格に反映させるため価格改定も実施した。さらに、コスト削減や価格改定だけではなく、強靭な利益が出せるよう、事業モデルを大きく変革させたことが功を奏した。」

では、その事業変革とは具体的に何か?

同氏によれば、選択と集中、フォーカスする製品・国に資源を集中させる事だという。

ブリンカー氏は、直近での事業変革について、「選択と集中」を繰り返し口にし、こう続けた。
「カーディナルヘルスの国際医療機器流通部門では数年前からフォーカスする製品・国に投資を集中させるという大きな変革を行っている。その過程においていくつかの国からは撤退した。撤退した国は40か国にのぼり、たとえばロシア、ウクライナ、アジアの諸外国をはじめ、売上規模が小さいラテンアメリカ圏やアジア圏の小さな国からも撤退した。

現在は、市場が大きくビジネスに親和性がある日本、カナダを単体で運営し、そのほかの国は、ダイレクトマーケット、チャネルパートナーシップマーケットに区分し、市場ごとに異なるアプローチでビジネスを展開している。日本は二番目に大きな市場であり、当社の業績全体に大きく寄与している。中国やフランスなどの国を含むダイレクトマーケットでは、現地の医療サービスの提供者と直接取引し、インドなどの国を含むチャネルパートナーシップマーケットでは、現地のパートナー企業の元で製品やサービスを提供している。

また、地域別に組織化するメリットもある。物流などはそのメリットを活かしている。製造も地域別組織で行っている。こうして地域別に組織化すると、その地域の営業担当は、地域特有の患者の状態や、病院や医療従事者の製品の選択基準に従っていくことで、さらなるシナジーを生み出せた。」

■医薬品と医療機器は違うベクトルで
またブリンカー氏は、カーディナルヘルスが手がける医薬品と医療機器は、違うベクトルで事業を運営しているという。

「カーディナルヘルスの医薬品事業は、グローバル展開は考えていない。アメリカの製薬市場は拡大しているが、カーディナルの根幹ビジネスはジェネリック薬剤の流通が中心で、そこは成熟した市場になっているから。

医療機器はグローバルに展開する。製品だけではなく、アメリカを中心としてサービスを海外展開していく。戦略的には、成長軸になっている医療機器事業を拡大させる方向でいる。

医療機器事業は、5部門に分かれている。ひとつは、アメリカの医療機器製造販売流通業、次にわたしがリードする国際部門、残りの3つは、病院内部の経営改革支援サービスと輸送・流通サービス、さらに在宅医療に医療機器を提供するサービス。それぞれ共通の成長戦略がある。今後3年間で大きな成長を期待している」

■IT投資やM&Aも積極的に、日本国内から革新的な新製品も
最後にブリンカー氏は、基幹システム等ITへの投資やM&Aにも意欲を示した。

「今後は、生産コストの上昇によって起こるインフレや、物流コスト増といった課題を克服しないと、企業の成長はない。また、冷静にポートフォリオを見直しながら、さらなる選択と集中、効率化を図っていく。ここはこれからも変わらない。

また、カーディナルヘルスは製品だけでなく、ITへの投資も計画している。アメリカ以外への取り組みとしてM&Aも視野に入れている。カーディナルヘルスは、事業運営のなかでITへの投資に大きなボリュームを割いている。

選択と集中の結果、いくつかの製品群の中には撤退する製品もあるだろう。いっぽうで、新技術と革新性があるエキサイティングな製品を発売する計画もある。

ブリンカー氏によれば、今年度日本では7つの新製品を発売する計画だという。そのうち6つの商品は静岡県袋井市にあるR&Dセンターで開発されたものだ。また「来年度以降に発売される革新的な製品にも期待してほしい」とのこと。どのような新製品が登場するのか。興味がある企業は今から心待ちにしていよう。

■カーディナルヘルス

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